『ハーレム・ナイト』 作曲 : デューク・エリントン「It Don't Mean A Thing 」

ロック、ジャズ、ヒップホップなどの音楽や映画。〝男〟を感じるものを常に好いてきた高岩 遼のフェイバリットな映画とそれにまつわる音楽を、〝高岩流の男の美学〟として紹介していきます。文章・絵:高岩 遼


 

今回はジャズムービーにしようと思う。それもマフィアやギャングがうじゃうじゃの、もぐりの酒場がバリバリのタフガイの時代の。

1989年公開の『ハーレム・ナイト』。ハーレム最大のクラブの経営者、シュガー・レイの邸宅に待ち伏せしていた白人デカの鼻歌は「It Don’t Mean A Thing 」だ。「スウィングしなけりゃ意味がない」と1930年代のニューヨークはハーレムのジャズクラブのオーナーが歌われてんだからなかなかトンチが効いてるよな。作曲は言わずもがなデューク・エリントン。このシーンのシュガー・レイが黒く長い指で持つグラスに注ぐバーボンが美しくて、なんとも美味そうなんだよな。

 

♪It don’t mean a thing
♪If it ain’t got that swing

アレがなきゃクソ意味ねぇー
スウィングしてなきゃクソ意味わかんねぇー

 

主演のエディ・マーフィが監督、脚本、製作総指揮のすべてで指揮をとった”コメディ映画”とされてるみたいだけど、バリバリのギャングものに俺は見える。この映画にたどり着いたのも、ジャズが入り口ではなく、イタリア系マフィアのDVDを買い漁っていたころに見つけたものだった。この『ハーレム・ナイト』には実在したギャング、”バグジー”ことベンジャミン・シーゲル役も登場したりと、ジャズ好き~ギャング好きにはいろいろがリンクして楽しめる作品だと思うな。『ゴッド・ファーザー』など、アメリカにおける禁酒法のギャングもの映画は基本白人側(移民)のストーリーが多いんだけど、この映画は黒人サイドの賭博と暴力と金と女とシガーと酒と……のお話でなかなか珍しく、学になる。

 

禁酒法という時代に生まれたかったとマジで思っていたあのころの俺。a.k.a ジャズエイジとも呼ばれたこの時代は、ジャズ史の中でいう「スウィング」が盛り上がろうとしていた時代だねー。映画は1918年を舞台に始まるんだけど、そのBGMは「ラグタイム」調だねー。20年後に描かれる舞台では「スウィング」してるねー。と、そういうわかりやすい音楽的変化も楽しめる(音楽はハービー・ハンコックが担当していた!! ほほう)。

 

あと観どころってか、最高なのは汚い言葉が多過ぎってところかな。「ass」だの「motha-fxxkin’」だの「shit」だの「suck」だの「nigga」だの。黒人社会の厳しい色彩感に拍車をかけるスラングを聞いてるとゾワゾワするんだよな。かっけー!! 俺も使いてぇー!! ってなるけど、ダメよ。良い子は真似しちゃダメ。

 

あと、ファッション!! 最高。あとは店の看板とかのフォント!! 最高。あとは車と、あと家具とか……とりあえずだ(笑)、百聞は一見にしかず。男ならまずはご覧よ。そんでよ、茅場町にいい店あるから、そこでギャング映画の語らいをバーボンでも飲みながら開くべよ。もちろんスウィング、聴きながらさ。