『夜の大捜査線』/歌:レイ・チャールズ 作曲:クインシー・ジョーンズ「In the Heat of the Night」

ロック、ジャズ、ヒップホップなどの音楽や映画。〝男〟を感じるものを常に好いてきた高岩 遼のフェイバリットな映画とそれにまつわる音楽を、〝高岩流の男の美学〟として紹介していきます。文章・絵:高岩 遼


 

クインシー・ジョーンズが指揮をとり、名だたるスターが4小節程度でバトンを繋ぐ中、誰よりも歌う箇所が多いのは僕ちんの神様、レイ・チャールズだったりする(アウトロ含め)。これはアメリカからレイへのリスペクトの証だろうし、レイとクインシーの関係値が見え隠れする瞬間でもあったりして微笑ましい。ジェイミー・フォックスがレイ・チャールズを演じアカデミー主演男優賞を受賞した伝記映画(口パクは少し寂しかったけど)、『Ray』では若かりしレイとクインシー2人の出会いがチラリと描かれいる。チェックしてみると面白い。

 

さて、そんな今回は『Ray』に関する話ではなく、もはやブラックミュージックとというカテゴリーなど遥か高く飛び越え、今日の日本ポップスにも大きく影響をおよぼしたこの2人がタッグ組んだ映画が別にある。 タイトルは『夜の大捜査線』。’60年代後半の映画だ。

 

シドニー・ポワチェというアフリカン・アメリカン俳優のパイオニアがデカ役で、人種差別が激しかったアメリカ南部ミシシッピ州で起きた殺人事件を軸に展開される男たちのサスペンスドラマ。映画の背景には、マルコム・Xやキング牧師が教導化益し政治を動かした黒人人種獲得への公民権運動があり、パッと見、ハードボイルドなクライム映画でまとめられているが、かなり社会派ムービーの1本なのだ。そして、緊迫の熱帯夜、滴る汗に拍車をかけるレイが唄うブルースが、恐ろしく、そして心地がいい。

 

♪In the heat of the night
♪Seems like a cold sweat
♪Creeping cross my brow, oh yes
♪In the heat of the night
♪I’m a feelin’ motherless somehow
♪Stars with evil eyes stare from the sky

 

なんて熱い夜なんだよ
俺は冷や汗をかいたまま
十字架を額に押し当てる
なんてクソみたいに熱い夜だ
まるで孤児になったみたいな気分だ
悪い星に生まれたということにするか
そうすりゃすべて 説明がつくんだがな

 

時代考証という言葉がある。お洒落のくくりでJ・ディラやロバート・グラスパーをiPodに入れる前に、ブラックミュージックという歴史を紐解いてみる。すると余計に深く聴こえてきたりする。無論、俺はいちファンとしてのアドバイスしかできない。アフリカン・アメリカンのこれまでの闘いを俺は知らない。俺は日本男児としての誇りと叫びを、この夜に叫び続けたい。