『サブウェイ』/エリック・セラ

ロック、ジャズ、ヒップホップなどの音楽や映画。〝男〟を感じるものを常に好いてきた高岩 遼のフェイバリットな映画とそれにまつわる音楽を、〝高岩流の男の美学〟として紹介していきます。文章・絵:高岩 遼


 

新年明けましておめでとうございますストリート。本年も高岩 遼、ザ・スロットル、サナバガンともども、よろしくお願いいたします。各活動にご期待ください。皆様の最後の平成がクレージーな1年になりますように。

 

さて、まずはとあるリリックを紹介するぜ。頭に浮かんだメロディ

 

大人がすべての八つ裂き
ハニー 従わなくいいよ
飛び込むだけ Subway

 

これは、俺が書いたもの。今ではプレイしなくなったけど、ザ・スロットルのさりげない名曲「Subway」というナンバーの一節。これから紹介する映画『サブウェイ』に影響をモロに受けて書いた歌詞だった。

 

フランスはパリ。大都市の真下に縦横無尽にはりめぐらされている地下鉄。そのさらに地中深くには迷路のような場所があった。主人公のフレッド(クリストファー・ランバード)はトラブルで男たちに追われて地下鉄に迷い込む。金持ちんとこの娘エレナ(イザベル・アジャーニ)の結婚パーティに忍び込み金庫を爆破(笑)、重要書類をパクってきたからだ。地下鉄という楽園に身を隠したフレッドは、そこに住みつく若者たちと昔からの夢であったロックコンサートを開催しようと試みる……。

 

パリのラビリンスを舞台にしたこのクライム、ラヴ、ミュージカル? 映画は、日本でもカルト的人気のあるリュック・ベッソンの初期監督作品。この『サブウェイ』以降スターと成り上がるジャン・レノや、リシャール・ボーランジェなどの姿も発見できる。

 

『フィフス・エレメント』とかにも繋がるんでしょうな、なんとも言えないSF感にはいつの間にか引き込まれちまうもので、リュック・ベッソン映画をほぼ担当しているエリック・セラという音楽家が、ここでは精神的な意味での”パンク”に拍車をかけている。

 

結成するバンドのヴォーカルは黒人で、全然違うけどあのヴィンテージ・トラブル感もありつつ、まぁそれはUSで、フランスならではの人種感がアーティ。この凸凹バンドの演奏がエンディングの要となるんだけど、俺はあえて地下鉄に話が移行する前、オープニングのカーチェイスのシーン&音楽が印象的だったのであえて触れておく。インストなので歌詞はない。その音楽は主人公フレッドがカセットテープでかけていたんだぜ、とゆう演出だったり、軽快なニューウェイヴポップが無駄にお洒落だったりしたね。

 

どっかの古書屋でVHSゲトって、わざわざ歌詞作って自分のバンドで演奏するくらいなので、そこらへん察してもらいつつ、また1段大人の階段を登ろうとしているみんなにこの映画を観てもらいたいと思います。若者というのは年齢じゃないハートの話。周りがベターになろうとも理由のある反抗を続けていきたい。抑圧と戦っていく。キャツらにとっての地下が、地上となるときは近い。