FASHION

あの人が高ぶる、くつとカバン――藤井隆行

The Choice is Yours

ウエアよりも道具の側面が強いシューズやバッグは、使い勝手ももちろん大切だ。だけど、そこに美学や思い出を込めるとそんな実用品は替えの効かない唯一無二の存在となる。センスの良いあの人たちの心が弾むのは、どんなアイテムに触れたときなのか。納得や共感とフレッシュな驚きで満ちた彼らの”選択”に誰よりクールな彼らの偏愛と情熱を見る。

Photo:Kengo Shimizu text:Rui Konno

ものを大事にするのはあまり好きじゃない気に入ったものほどガシガシ使いたい

高校生で「BIRKENSTOCK」の”BOSTON”を買って以来、藤井さんはベージュの靴にことさら強いこだわりを持っている。当然彼の自宅の下駄箱の中身はベージュが大半を占めていて、ここで彼が見せてくれたのも、そんなフェイバリットカラーの1足だ。「これはSupremeとPADMORE & BARNESとのコラボで、20年くらい前に発売されてたもの。これを買った当時は今よりもベージュのシューズ率が高かったと思います(笑)」。厚めのクレープソールにラフな毛足のスウェード素材、表革のライニング。その佇まいは確かにクールだが、履いてしまえばそれがどこのブランドなのか、わかる人は少ないだろう。「僕にとってのSupremeの魅力って、こういうところなんです。派手じゃなくて渋くて、ニューヨークのストリートを感じさせてくれるところ」。確かに、履き込まれてクタクタになったその表情も、妙に味わい深い。「ものを大事にするのがあまり好きじゃないんですよ。どんなものでも、ガシガシ使いたい。このトートなんかも洗濯機でガンガン洗ってるけど、この風合いが良くて。昨年、フォトグラファーのデヴィッド・シムズと会う機会があったんですけど、彼は同じトートをもっとボロボロの状態で使っていて。それもすごく格好良かったんですよ」。そんな視点に、古着に精通して経年変化の魅力をよく知る藤井さんらしさがよく現れている。「Supremeのジェームス・ジェビアがずっとLevi’s®の”70505″を着ていたりとか、そういう姿勢が昔から好きだったし、やっぱり未だに格好良さを感じます」。奇しくもニューヨークをルーツに持つブランドたちがここに挙がったのは、彼の中にそんな消えない憧憬が今もあるからなのだろう。

「Supreme × PADMORE & BARNES」のシューズ
ワントーンで統一されたことでスウェードとスムースレザー、クレープソールの質感が際立ったデザイン。「経年でソールは硬くなってるけど、天然ゴムだから夏になると柔らかくなる。ショーツに合わせたいですね」

「RICHARDSON MAGAZINE」のトートバッグ
目の粗い、タフで肉厚なコットンキャンバスボディは使い込まれたことでさらにその風合いを増している。「最初に買ったのはブラックで、それが気に入って、ホワイトも後から買いました。ロゴのパッチも好き」

Name:藤井隆行 Job:nonnative デザイナー

Profile:1976年生まれ、奈良県出身。セレクトショップなどを経て、盟友・サーフェン智さんが立ち上げた「nonnative」に2001年よりデザイナーとして参加。プロダクト、特にシューズへの造詣の深さはかなりのもの。

※本ページは『warp MAGAZINE JAPAN』2018年4号に掲載された情報を再編集したものです。

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