CULTURE

台風をも凌駕したULTRA JAPAN 2017 イベントレポート

12万人が熱狂!ジャンルの壁を越え新たなステージへ

9月16日(土)~18日(祝・月)にかけて開催された「ULTRA JAPAN 2017」。今年は初日と2日目があいにくの悪天候に見舞われながらも、3日間でのべ12万人ものオーディエンスを歓喜させた。
今回はULTRA MAIN STAGE、RESISTANCE、ULTRA PARK STAGEに加え、LIVE STAGEが新設。計4つのステージにて総勢95組以上ものアーティストが登場したが、なかでも一番の盛り上がりを見せていたのはやはりULTRA MAIN STAGE。最大のキャパシティを誇るこのステージには、初日にSAM FELDTやNICKY ROMERO、STEVE ANGELLO、ALESSO。2日目にはKNIFE PARTYにHARDWELL、そしてTHE CHAINSMOKERS。最終日はKYGOにSTEVE AOKI、さらにはTIËSTOなど、まさにビッグスターがそろい踏み。彼らはその実力を遺憾なく発揮し、終始オーディエンスを圧倒していた。昨今のフェスではEDMはもちろん爆発的な破壊力を持つトラップを多用し、ヒップホップ、ハウス、さらにはハードスタイルまで様々なサウンドを駆使するのがある種のセオリーだ。多種多様な楽曲を巧みにミックスし、緩急を付けた大きな展開の中で幾度となくピークを生み出しながらも一貫したストーリーを作っていくことが求められている。彼らはみなそれをクリアしながら、なおかつ自らのアイデンティティを見事に打ち出していた。

  • Tiësto
  • Steve Aoki
  • The Chainsmokers
  • Nicky Romero

なかでも、それが如実に現れていたのが2日目。矢継ぎ早にミックスし、数多のハイライトを生みだしていくHARDWELLに対し、THE CHAINSMOKERSはトラップをベースに自身のアンセムを絶妙なタイミングで差し込んでいく。それは彼らの楽曲の強度があってこそ成せる業でもあるが、生粋のDJとしての存在感が際立つHARDWELLとプロデューサー気質のTHE CHAINSMOKERSのコントラストはシーンの最前線を感じる上でとても有意義で、この上なく幸せな時間だった。その証拠に、この日は4回目にして過去最大の悪天候となったにも関わらず、多くのオーディエンスたちが風雨をものともせずに大熱狂。むしろ、いつも以上の一体感が生まれ、それはダンスミュージック、そして「ULTRA JAPAN」への大きな愛を改めて感じさせるほどだった。

  • Alesso
  • 中田ヤスタカ
  • Steve Aoki
  • Hardwell

ダンスミュージックが日々進化するように、その表現の場も進化していく。それはステージの造作や演出、そしてホスピタリティなどあらゆる面において言えることだが、今回の「ULTRA JAPAN」では同時にフェスティバルとしてのパッケージに新たな兆しが見えていた。その最たるものがLIVE STAGEだ。
本家マイアミ「Ultra Music Festival(UMF)」でも注目を集めるLIVE STAGEが早くも日本上陸。もちろん、これまでにも本祭でライヴが行なわれることは多々あったが、それに特化したステージは初。今ではDJもリアルタイムで音楽を再構築していくことが当たり前となり、互いの距離も縮まってきてはいるが、やはりライヴは別物。生演奏がもたらすダイナミズムや情感、シンガーたちの生のバイブス、そして誰も予想し得ない即興性。LIVE STAGEには、今、その瞬間にしか体感することのできない、濃密な空間が絶えず広がっていた。さらには、これまでの「ULTRA JAPAN」を格段に超える幅広い音楽性を実現したことも大きい。ダンスミュージックが主体となる本祭において、ポップやロックはもとより、ヒップホップやR&Bといったアーバンなサウンドも過去にはほとんど見ることがなかったが、LIVE STAGEではそれら全てを網羅。初日にはPANDORAやちゃんみな、水曜日のカンパネラが、2日目にはゆるふわギャングやSALU、KOHHが。3日目にはMIYAVIやCROSSFAITHが「ULTRA JAPAN」にフレッシュな息吹を吹き込んでいた。そして、そのなかでも大きな可能性を感じさせてくれたのがSALUとKOHHのステージ。

そんなLIVE STAGEと壁一枚隔てた場所には、漆黒のテントに覆われたRESISTANCEがあった。アンダーグラウンドのハウス、テクノの粋を極めたこのステージも今回で3回目。SETH TROXLERやNIC FANCIULLI、SASHA | JOHN DIGWEEDといった錚々たる面々が集結していたが、今年最大の注目はなんといってもCARL COX。世界のテクノシーンを牽引する巨匠であり、本家「UMF」の看板とも言える彼が満を持して「ULTRA JAPAN」初登場。その勇姿を見ようと最終日大トリを飾った彼のステージには多くのオーディエンスが詰めかけ、その期待に応えるべくCARL COXは持ち前のグルーヴ感みなぎるプレイで熱狂の渦を創出。
かたや隣ではUNDERWORLD、さらにULTRA MAIN STAGEではTIËSTOがプレイ。長きに渡りダンスミュージックを牽引してきた偉大なる3組のアーティストが同時に登場する。こんなに贅沢なことはないと思う反面、オーディエンスにとっては誰を見るか、それは実に苦渋の決断だったであろうが……それも「ULTRA JAPAN」の醍醐味だ。

  • ULTRA PARK Produced by Onitsuka Tiger
  • ULTRA PARK Produced by Onitsuka Tiger
  • JOMMY
  • YUMMY

もはや特定のジャンルやカテゴリに縛られることなく、あらゆるサウンドを包括した「ULTRA JAPAN」。今年も見事大成功を収めたが、次回は節目となる5回目。くしくも、本家マイアミの「UMF」も記念すべき20周年を迎え、さらなる進化が期待されているなか、「ULTRA JAPAN」もまた必ずや刷新し、新たな姿を見せてくれることだろう。

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