災害時の一時退避場所を広めるため、シブヤ・アロープロジェクトが彫刻 家 名和晃平氏による彫刻作品を制作・公開!
シブヤ・アロープロジェクトは、災害時の一時退避場所と避難経路を来街者に周知する目的のもと、2017年に渋谷区によって発足された。
近年、首都圏での災害への警戒が高まる中、もし首都直下地震などの大規模災害が発生した場合には、首都圏のほとんどの公共交通機関が運行を停止するとされ、渋谷区では約23万人の帰宅困難者が発生すると想定されている。災害発生時、多くの来街者への帰宅困難者対策が喫緊の課題となっている。
そのため渋谷区では、来街者が一時的に退避できる安全な場所として「一時退避場所」を定めている。シブヤ・アロープロジェクトは、この「一時退避場所」の位置をアートを通じて情報発信し、平時からの防災意識の向上や災害への備えを目的とした活動を行っている。
2024年にはブランディングを新たにリニューアルし、米サンフランシスコの世界的アーティストBarry McGeeによるミューラル(壁画)、そして国際的に活躍する写真家・森山大道の写真作品に続き、日本を代表するミューラルアーティストHITOTZUKI(ヒトツキ)の壁画作品を完成させた。
このたび、国内外で活躍する彫刻家・名和晃平による彫刻作品が恵比寿東公園(通称「タコ公園」)にて公開された。
名和が制作したのは、自身の代表的な彫刻シリーズ「Ether(エーテル)」と、それを見上げる人物のモチーフを組み合わせた作品。「Ether」は、滴が地面に落ちる際のシルエットを取り出し、それを上下反転させながらランダムに積み重ねることで造形されており、本作ではその特徴的なフォルムを見上げる人影を通じて、生命の連なりや自然と人間の関係性へと思考が誘われる。
本作は、名和とダンサー・田中泯とのコラボレーションによって2024年に公開されたパフォーマンス作品《彼岸より》をきっかけに生まれた。印象的な強烈な赤色は、危険を示す警告色であると同時に、《彼岸より》で田中の身体を包んでいた泥の色でもあり、巨大な困難に対する反骨のエネルギーが込められている。
また、設置場所である恵比寿東公園は、田中が出演するヴィム・ヴェンダース監督の映画『PERFECT DAYS』において、主人公・平山が掃除に訪れる通称「イカトイレ」(槙文彦設計)があるなど、さまざまな面で本作と響き合っている。
公園入り口の石垣の上に設置された本作は、公共空間の中に活力をもたらすとともに、ビルに囲まれた公園の上に広がる空へと人々の視線を導くきっかけにもなっている。春には、公園の桜とともに並ぶ姿も楽しめそうだ。