FASHION

Shibuya and Me　それぞれの時間、それぞれの渋谷

今日もここはひとびとの活気で溢れていて、悲喜こもごもの人間模様を描いている。ここで長い時間を過ごしてきた人たちはビルの谷間で何を想い、どんな経験をしてきたのか。渋谷。こうしている今も、この街では誰も知らない新たな物語が生まれている。

「渋谷は"ひとりの時間を過ごせる場所"」

現在、俳優として活躍中の水上剣星さん。かつては自身もブランドスタッフとして働いていた街、原宿をひさしぶりに訪れた彼が向かった先は、10年来の友人である的場さんがディレクションするセレクトショップ、「off shore」。まずは併設されたコーヒースタンドで、アイスコーヒー片手にチルアウト。「結構ひと見知りするんで、的場さんとも最初は服の話題からはじまって、いろいろと相談したりするようになって仲良くなっていったという感じで。普段はLINEでやり取りをしていますが、こうやってお店で会うのはオープンのとき以来ですね」。”仲間に会いに渋谷に出る”という感覚は東京ローカルならでは。だがその機会も最近はめっきり減ったそう。「僕がいたころに比べると、誰かしら仲間に会える街という感覚は薄くなってきたかも。よく行っていたショップもスタッフが世代交代していたりするし、この10年間で変わらず会い続けているのって的場さんくらいですからね」。人との距離感が、街との付き合い方を変えたというのもあるが、彼にとっては家族の存在もその理由のひとつ。「渋谷って家族連れだとどうしても避けちゃうんですよね。街の喧騒も人混みもすごいじゃないですか？　でも、だからこそ”ひとりの時間を過ごせる場所”でもあります」。そんな彼のMYフェイバリットコースを教えてもらった。「別に普通ですよ？ 明治通り沿いのマックで、てりやきマックバーガーを食べてテンションを上げて、センター街のJEANS MATEでDickesを探した後に、MEGAドンキでBluetoothイヤホンを買おうと思ったら売り切れていて、LABI渋谷に行ったりとか。で、お気に入りの店で軽くつまみながら1杯飲んで、家族の元に帰る。これが30代妻子持ちのリアルです（笑）」。街並みや行き交う人々の姿がいかに変わろうとも、変わらない日常が流れる街。それが彼にとっての渋谷なのである。

GILDANのスウェットパーカ、rag & boneのデニムパンツ、Reebok CLASSICのスニーカー、AKAHIROMIYASHITATheSoloist.のバンダナ（すべて本人私物）

photo:Kousuke Matsuki　text:Nobuaki “TOMMY” Tominaga