「アメカジからピザのデリバリーまで、アメリカという影響は映画『E.T.』から」 MR PORTER PAPERBACK日本語版スペシャルインタビュー#7 / スタイルある男たちのスタイルはどうつくられたのか?

島倉弘光

 MR PORTER日本語版発刊スペシャルインタビュー。今回は1988年の創業以来アメリカはメイン州を中心にしたアメカジの歴史を継ぐショップMAINE(メイン)のディレクターを務める島倉弘光さん。シェットランドセーター、B.D.シャツ、パンツなどのトラディショナルなアイテムも日本人に合うように色や素材をチョイスして展開する。そんな服のディレクションを支えるセンスのルーツはなんだろうか。さっそく、話を聞いてみよう。

 古くから大学や古書店、カレー屋などの飲食店や喫茶店がひしめく神保町の町並にアメカジのセレクトショップMAINE(メイン)がある。1988年に創業して30年となる老舗のお店だ。島倉さんの話によると、アメリカ建国において母体となったイギリスの植民地ニューイングランド地方にある最東北部のメイン州は昔アメリカ製品のよいもの、たとえばセーターやシャツ、靴などいろいろ集まってきていた。それらのいいものを紹介していきたいという思いで店の名前となったという。そんな古きよきアメリカの良品からイギリスのインポートまで独自の視点でアメカジのアイテムを揃えるMAINEのディレクターとして活躍する島倉さんが初めてアメカジに触れたのは映画だったそうだ。

 小学校のときに観た映画『E.T.』(1982)には、出てくる主人公やお兄ちゃん、周りの友だちの格好がいまで言うアメカジだったんですね。グレーのフードのパーカーとかサーマルの上下、L2–B(エルツービー)のフライトジャケットを着ていたのを観て子どもながらに漠然とカッコいいなと思いました。当時日本になかったピザのデリバリーまでアメリカの影響を受けました。
 音楽は70年代のイーグルス。音楽を聞きながらネルシャツやアメカジの格好をする写真を見て刺激を受けていたと思います。

 そこから、アメカジや洋服に興味が出たのは高校生のとき。育った埼玉の越谷市にはインポートセレクトショップに卸している会社の倉庫があったんですね。そことなかよくなったことで、当時バスケ部やバレー部の身長が高い友だちも着ることができたんですよね。
 倉庫にあるアメリカの洋服を初めて見て触ったことで、町の洋服屋さんにはない色だったり、ディテールだったり、素材だったりに引き込まれていきました。そして、高校卒業後の90年にお店でアルバイトをするようになりました。ただ、旅行も好きだったので、一旦添乗員になったんですけど、やっぱり洋服のほうがいいなと思って戻ってきた経緯があります。

「ニューイングランド・トラッドは シェットランドセーターにチノパンとスエードの靴」

 ディレクターという仕事は、来年はどういうテイストで行こうかという舵取りですとか、弊社でやっているいろいろなブランドTHE BAGGY、MAYO SPRUCE、KINGSWOOD、MINNESOTA RUGG、GB SPORT VINTAGE CLOTHINGなど、ほかアメリカのワークウェアやミリタリーをコンセプトにしたカジュアルウェアCAMCO(カムコ)というブランドを引き継いで日本国内でやっているんですけど、その企画デザインなどをやっています。

 2018年おすすめのスタイルは「ニューイングランド・トラッド」スタイル。
 昔アメリカ製品のよいものが集まってきたというお話をしましたが、そこの原点となるイメージが今季おすすめのスタイル。アイテムでいうとネイビーブレザー、B.D.(ボタンダウン)シャツ、シェットランドセーター、チノパンです。シェットランドセーターにスエードの靴にチノパンや5ポケットのジーンズとかを合わせて楽しんでいただきたいですね。

 トラッドというなつかしさと伝統を踏襲しながらも現代にフィットするような色使いやアップデートした着こなしは参考したいもの。なかでも店内に入るとすぐに目に付くところにあるPeter Blance & Co.(ピーター・ブランス社)のシェットランドセーターだ。

 このセーターは、イギリスはスコットランドのなかにあるシェットランド島ホスウィック地方のシェットランドウールを使った伝統的なニットです。ハンドフレーム(手編み機)でつくられていて軽くて保温性高いのが特徴です。起毛加工と通常の加工の2種類があります。ふわふわの質感の起毛は、セーターをひっかけてスコットランドの国花でもあるアザミの棘でぐるぐるまわして一枚一枚ひっかいているんですよ。色合いもやわらかくなりますね。
 イギリス国内でも毛糸屋さんはすごく少なくなっていて、あったとしてもグレーやネイビー、キャメルの決まった色が多いのですが、ここは他社にはない鮮やかな毛糸の色も特徴ですね。MAINEで毎年やる定番なんですけど、代理店もかねているブランドなので、年に合う色を選んでオーダーしています。

「毎日帽子をかぶるとかトレードマークになるスタイルを意識して着るだけで人におぼえてもらえます」

 こうアメカジのショップで長くできるのは、レディースと違ってメンズは極端に変わっていくファッションでもないので、長く好きでいられるというところであるのかな。
 この本(MR PORTER PAPERBACK)には年相応の服装選びのコツが書かれていましたが、ぼく自身が着用するアイテムは、B.D.シャツ、ワークシャツ、ジーンズ、チノパン、ミリタリーパンツで昔から変わらないんですよね。それをそのときの年齢で、着方とか色で工夫するような感じです。たとえばB.D.のボタンを止めたり、わざと止めなかったりという着方もそう。
 年代にかかわらず同じアイテムでも工夫する着方で少しずつ変えれば毎日新鮮な気持ちで過ごせます。いらっしゃるお客の年齢層は25歳から70、80歳まで。昔はこうだったんだよと教えて下さる年配の方もいらっしゃいます。
 30代40代の方たちってベーシックなグレーとかネイビーを選びがちなんですけど、洒落ている年配の方って意外に赤とか派手な色を選んでいかれる方が多いですね。色の問題で完全に区切りというのもないですし、冒険する勇気も必要かなと思います。

 手持ちのトラディショナルなアイテムでも、その日の気分や年齢に合わせて遊び心を入れてその人らしさが光る自由なコーディネイトを楽しむのが島倉さんの着こなしの極意だ。いつも着ているベーシックなアイテムで、自分らしいブランディングを取り入れた着こなしのコツを聞いた。

 自分自身でトレードマークになるようなことはスタイルに取り入れていますね。簡単なことですが、毎日帽子をかぶるとか、ツバを上げてフリップアップするとか、同じ洋服を着ているとか。
 以前仕事でアメリカに行ったときグレゴリーのデイパックなどのバッグをつねに背負うようにしていたら後から声をかけられたことがあるんですよ。
 「おまえいつもグレゴリー背負っているだろ」って。
 特に海外では名前をおぼえてもらうのは難しいし、次に会ったときにおぼえられていないことが普通でしたけれど。おぼえられたいじゃないですか。そういった意味では、自分のブランディングかも知れませんね。トレードマークになる着方だったり、着こなしだったり、ものだったり、身に付けるようにはしています。話のきっかけになって、いいものの出会いや仕事につながるんです。
 実は弊社の代表がいつも毎日白のB.D.を着ていて、おぼえられた話を聞いたのがちょっと頭のなかに残っていて。
 せっかく少しでもメリットがあるようにするならば、着るときに意識して着てみるといいかも知れませんね。

当時ブルックスブラザースのB.D.シャツを手がけていたハワード・グロスマンにお願いしてつくり始めたのがきっかけとなったファクトリーブランド。

ニューヨークのブランドKINGSWOODのブレザー。ブルックスブラザースのアウターをつくっていた経緯があるファクトリーブランド。シェットランドセーターやB.D.シャツとよく合う。5ポケット、チノパンツ、ミリタリーパンツとともにマフラーを巻いて。

MAINE
http://www.maine1988.com

しまくら・ひろみつ●1971年北千住生まれ。越谷育ち。アメリカの古きよき時代のインポート商品を忠実に再現し、素材や着心地を重視した機能的で骨太なアメカジスタイルを提案するセレクトショップ〈MAINE〉のディレクター。ブランドTHE BAGGY、MAYO SPRUCE、KINGSWOOD、MINNESOTA RUGG、GB SPORT VINTAGE CLOTHING、CAMCOの企画デザインも手がける。海外には年に2回足を運び、工場や生産者とのコミュニケーションと買い付けを行う。洋服選びの際のアドバイスが的確で常連客をはじめ初めての客まで絶大な支持を受けている。

書影
THE MR PORTER PAPERBACK
THE MANUAL FOR A STYLISH LIFE VOLUME ONE

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「読んで買いたい」意欲を高めて、自ずと「商品購入」へとつなげたショッピングスタイルなのだ。「編集」を指揮したのは元英国版『Esquire』誌の編集長だったジェレミー・ラングミード氏。

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