【#tbt】男がスニーカーを捨てるとき。

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04/20 19:19 UP DATE COLUMN

【#tbt】男がスニーカーを捨てるとき。

皆さんはSNSで良く聞く”#tbt”ってご存知ですか!? このハッシュタッグ日本ではまだまだ馴染みがないですが”#throwback thursday”の略称で、アップするネタに乏しい木曜日は、過去をみんなでシェアしましょうと言う意味なんだとか。誰が考案したのか知りませんが、web担当も思わずニッコリなシャレオツで理に適ったものを考えるもんです。そんなわけで、みんなで使うハッシュタグならパクっ……参考にしても問題ないだろうと言うことで、木曜は「warp MAGAZIN JAPAN」本誌に掲載された人気記事をディギンしちゃいます。まぁ……ようはリサイクルってことですが、内容は確かなのでぜひぜひご覧あれ!


スニーカーを愛して止まない男という生き物が、
愛機と告別するときの複雑な気持ちをアンソロジー。

photo:Kenji Nakata text:Senichiro Ozawa based on WIN,Jun Hirano,Ryosuke Komai,Naoyuki Inoue

Fat Classicのジャケット 3万3000円、パンツ 2万5000円(ともにFAT HEAD SHOP )、JORDAN BRANDのスニーカー(本人私物) 撮影協力:FAT

ニューソール診療所でリハビリを終えた男。よくないと思いつつも、女の言葉をを遮ってしまった。女は男の妻で、男は女の夫、お互いの気持ちが理解できずに、ただ苛立ちや寂しさを募らせるばかり。これはソールジャンキーというひと言では解決できない。スニーカーへの奥深い思い入れや物欲は、相容れない相手との2次災害のような葛藤にさいなまれるものだ。続々とリリースされる新作スニーカー、新しい配色。そして復刻シリーズ。春が来る度に新社会人が世に船出するよりも、四季を通じて多くのそそるルックスのスニーカーがシッピングされるわけだから、男たちは楽しくてしょうがない。そして、それを横目に女は、そうワイフやステディやファミリーは、家を占拠していくスニーカーが苦々しくてしょうがない。もし、積み上げられた箱が何かの拍子で崩れたりしようものなら、ここぞとばかりに叫ぶだろう。

「いい加減にして。いらない物は捨ててちょうだい!」

その顔は気色ばんで赤く膨れている。しかし、困った。なぜなら、男にとってスニーカーは、「はい、そうですね」と簡単に捨てられるシロモノではないのだ。簡単に手に入らないものも多かったし、シューレースをキュッとやったときの高揚感を思い出すだけでたまらなくなる。それ餓ルビーの指輪よりも貴重なのである。

「どうせ、棺桶まで持っていけないのよ!」。

そんな身も蓋もないことは言わないで欲しい。あきれた顔をしてもいいから、ただ笑って黙認して欲しい。とにかく毎年、毎年、男の部屋に新しいスニーカーが増えていく。増えていくのに比例して、汚れたり痛んだスニーカーも増えていく。このバランス関係は果たしてどうなるのか。個人的にじゃ、履き潰したら捨てるようにしている。バッシュやスケシューは左足ソールがとにかくすぐに壊れるるので、それをさよならの目安にしている。うん○やガムをうっかり踏もうが、誰かに思い切りトウを踏まれてハンコされようが、が落ちたり汚れたりしてもおとがめなし。とにかく左足のソールが逝ってしまうまでは1軍。それが自分の基準だ。では、スニーカー好きの有志の場合はどうだろうか。サンプリングしてみた。

「自分みたいなタイプはキックゲームのゲームオーバーをむかえないかぎり、大きな倉庫を借りるはめになると思います」。
1000足以上からは数えるのをやめた「Winiche&Co.」を手掛けるWIN氏は、基本的にスニーカー破棄することはないそうだ。例外として、再び同じモデルが買い戻せる場合に限って、アッパーが劣化したり破損したら破棄するという。ということで、初めてスニーカーを履いたキッズ時代から現在に至るまで、「JORDAN BRAND」の”AIR JORDAN”を中心にほとんどのスニーカーが手元に残っているという。自他ともに認める狂人でスニーカー超人だ。

「長く履き込んだあとの汚れや、オーリー足の穴とかが目立ってきたら捨てます」。
アスファルトを蹴りまくった後にさよならするという「FAT」のプレス、KOMAI氏。スケートキッズだったのもあり、痛むのが早い消耗品とのさよならのタイミングをよく知っている。それでも捨てられないモデルというのがある。初めてキックフリップをメイクしたとさに履いていた相性のいいスケシュー、今はなきブランド「TRANSMIT」の木川田 直敏モデルだ。ボロポロになったけれど、自身のス
ケートボードの原点になるアイコンスニーカーは思い出深いのだ。

そんなKOMAI氏以上にメりハリがあって徹底している人がいる。東京の草野球シーンでその名を轟かすスラッガーでエース、さらにはランニングチームAFEのファウンダーとしても知られているDKJの愛称で親しまれる、JUN氏だ。「adidas」の”NORTON”(ブラック×ホワイト)と「NIKE」の”DELTA FORCE”(ブルー)の2足だけは氏の永久凍土の中だが、例えばハイテク系ス二一カーなどは(寝かせて2、3年したら履く場合もあるけど)、基本的には旬を過ぎたらバッサリいくそうだ。潔し。

僕と15周年を迎えた草野球チームとサッカーチームのチームメイトで、だいぶ大人になってから本格的なマラソンをはじめて、まさかのフルマラソン3時間切りが射程圏内になってきたNAOYUKI氏。彼は今は昔の10代のころから、「adidas」のキャンパスを大事に履いていた。それは水色、グレー、ネイビーの3足。十数年以上履き込んだそれらは当然ボロボロ。それでも何度かの引越による荷物整理の危機も乗り越えて、長生きしてくれたという。「本当に長く一緒にいたのだけど、息子が生まれてから初めての引越のとき。東日本大震災直後の心情とも重なり、破棄してしまい今はありません。最近、仕事の資料として使いたかったり、このコラムのアンケートのこともあり、今さらながら破棄したことを薄っすら後悔しています」。

そういえば、前述のJUN氏といえば、当然、僕らのチームとも試合をしことがあり、その度に、チームメイトNAOYUKl氏のバットは空を切らされていた。通算でとんでもない三振数を積み上げるNAOYUKI氏だけれど、ケタ違いの走行ノルマを自身に課す孤高のランナー。なにが言いたいかというと、実はプロリーグの世界から離れたところで、スニーカーブランドの代理戦争が勝手に勃発していたのである。自らが好むファンクションやデザインに自らのイデオロギーも含めたスニーカーの良し悪し。この2人、当人たちの知らないところで、N社とA社でせめぎあっていたのだ。どちらもブレることなく徹底して、それだけを履いている。今のところ、この勝負は五分と五分。今シーズンに果たして決着がつくのかどうか。僕だけで盛り上がって見守っていこうと思う。

とにかく。男たちのスニーカーに対するベクトルはこだわりを通り越して、もはや偏屈に満ちているということだ。捨てたくない、捨てられない偏屈。好みのブランド以外に対する偏屈。カラーやファンクションに対する偏屈。ソールジャンキーとかスニーカーヘッズなんていうカタカナはハイプな感じもあるけど、もっとしっくりくるのは、敬愛すべきスニーカー偏屈野郎。それでいいのだ。女といってもいろんな女のタイプがあるように、スニーカーだっていろいろある。なんでもいいんじゃない。だから、自ら惚れて手に入れたものはなかなか捨てられない。しかし、長い時聞が経つとそうはいかないこともある。

「スニーカーとワタシ、どっちが大切なのよ。どっちかにして!もうさよなら!」。
そんなことを突きつけられる日が来ないとは言い切れない。とくに2000足以上という領域に踏み込んでしまったら……。オーマイガ。

歌手のパーシー・スレッジのデビューシングル「When aMan Loves aWoman」(1966年)は、ビルボードとR&Bシングルチャートで1位を獲得した名曲。その後、原題そのままに1994年公開の映画『男が女を愛する時』の主題歌にも使用された。ポスターやジャケットのカバーは、主演で当時ハリウッド恋愛作品のクイーンとして君臨していた、メグ・ライアンとアンディ・ガルシアがベンチで佇む写真。往年のラマンチックコメディの伏線にはアメリカをはじめ、世界が抱える社会問題のひとつ、アルコールジャンキーが描かれていた。そして、コラムの邦題”男がスニーカーを捨てるとき”は、それ以上に猛烈なソールジャンキーへのオマージュでもある。

※本ページは『warp MAGAZINE JAPAN』2017年4号に掲載された情報を再編集したものです。

http://www.warpweb.jp/feature/feature.html