【#tbt】電気グルーヴが生み出す至福の電子音楽

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03/30 19:12 UP DATE COLUMN

【#tbt】電気グルーヴが生み出す至福の電子音楽

皆さんはSNSで良く聞く”#tbt”ってご存知ですか!? このハッシュタッグ日本ではまだまだ馴染みがないですが”#throwback thursday”の略称で、アップするネタに乏しい木曜日は、過去をみんなでシェアしましょうと言う意味なんだとか。誰が考案したのか知りませんが、web担当も思わずニッコリなシャレオツで理に適ったものを考えるもんです。そんなわけで、みんなで使うハッシュタグならパクっ……参考にしても問題ないだろうと言うことで、木曜は「warp MAGAZIN JAPAN」本誌に掲載された人気記事をディギンしちゃいます。まぁ……ようはリサイクルってことですが、内容は確かなのでぜひぜひご覧あれ!


結成28年目を迎える電気グルーヴが、4年ぶりのフルアルバム『TROPICAL LOVE』を完成させた。稀代のテクノDJ 、石野卓球と、超売れっ子俳優となったピエール瀧。エクストリームな個性を放ちながら、最高に楽しげなスタンスで制作に向かう2人が、電気グルーヴのルーツ、スタイル、音へのこだわりを語る。
photo:Tetsuo Kashiwada text:Reiko Tsuzura

迷わない確信があるからあれよあれよとできた

warp(以下、W) 今回のアルバムは、いつごろから制作されていたんですか。
ピエール瀧(以下、P) 去年の10月に合宿したんだよね。合宿で缶詰になろうと思って。
石野卓球(以下、I) はごろもにね。
P はごろも缶詰ね。
W (笑)。
I スタッフには「いつでもすぐにできるよ」って言ってたんだけど、山奥に行ってアルバムの話だけしてたら、本当にあれよあれよとできました。
P 2人で好きなものを確認しあって、気持ちいい音とか言葉をどんどん放り込んでいったらできてた、みたいな感じですよ。
W 具体的にはどんな話を?
I まず2人で使いたい単語を挙げていくんです。
P 言葉のリズム感とか、音の並びが大事なんで。音だけ聴くとリズムパターンに聴こえる言葉ってあるじゃないですか。
I ”業者”とか(笑)。そんなの、みんな歌詞で使わないでしょ。
W その作り方は昔からですか。
P 2人になって初めて作った『VOXXX』(2000年)からかな。
W 確かに今回のアルバムは『VOXXX』に通じるものを感じます。今回のはもっとライトな聴き心地ですけど。
I 『VOXXX』のときはメンバーがひとり抜けて、2人でやりたいことをやろうと思って、2年間レコーディングしてたんですよ。その情報量を全部詰め込んだから、重いんだよね。
P 当時はやりたいことをやるための方法も構築しなきゃいけなかったしね。でも今はそんな迷いもなくて、今回は単純に僕らが好きなものだけが詰まってる。
I 今はもう迷わずにできるっていう確信があるからね。昔は実験的なことにトライするとか、そういうのが必要な時期もあったけどさ。よくあるじゃないですか、ロックバンドが新たにダンスビート取り入れて失敗するとか(笑)。うちらはそういうの、もうないから。
W その迷わないスタンスは、いつごろ確立したんですか。
P 『YELLOW』(2008年)ぐらいかなあ。
I 大体ここまでキャリアがあって煮詰まったら、それはグループに何か根本的な問題があるってことだから。あと、新作を作るたびに煮詰まることが必要だっていうのは植え付けられた思想だから(笑)。「東京チンギスハーン」とか歌うのに葛藤なんかないですよ。それが電気の提示する音楽の楽しみだからね。
W 今回はゲストも多くて賑やかですが、人選はどのように?
I うちらは嫌われることが多いんで(笑)。オファーして断られると傷つくから、敵意を持たれてない人にしようと思って。となると、これまで向こうからコンタクトを取ってくれた人たちがいいかなと。KenKenはフェスで会ったときに、一緒にやりたいって言ってくれたんですよ。
P 電気に懐くやつって珍しいよね(笑)。
I (夏木)マリさんやトミタ(栞)は、僕にプロデュースを頼んでくれたから、今度は僕ら電気のフィールドで、お二方を素材として魅力的にするとしたらこんな感じですってオファーして。
W まずは曲ありきですか。
I そうそう。トミタが参加した曲は、女の子のコーラスが欲しいねって話をしてて。彼女は電気のレコーディングだからってがっつかない感じがすごくよかった。「ヴィーナスの丘」は2人で歌ってもしっくりこなくて、マリさんに歌ってもらったらどうだろうって一か八かオファーしたらOKが出て。
W 往年の歌謡曲っぽいアレンジですね。
I ’70年代歌謡曲のAメロ・Bメロ・サビがある曲をやりたかったんです。さらにスパニッシュギターも入れて、その音色がかなり独特だから、さて歌詞はどうしようかってときに、瀧がちょうどスペイン旅行に行って。
P プライベートでね。
I これは渡りに船だと思ったんだけど、なんのフィードバックもなかった(笑)。じゃあもう、マリさん自身のことを歌ってもらおうと思って、歌詞の中には”なつきまり”って言葉がいっぱい出てくるんです。
W あっ、確かに(笑)。きわどい言葉もいっぱいありますけど。
I 「 ヴィーナスの丘」は恥骨のことだからね。あといろんな比喩も入れてある。マリさんには全部バレて「スケベな歌よね」って言われたけど(笑)。プロだから受けた仕事は100%やるっていうスタンスがさすがでした。そのときに思ったんだけど、マリさんって瀧に似てるんだよ。
P ほんと? 共通項が全然見当たんないんだけど(笑)。
I ヴォーカル録りに対しての姿勢が似てる。歌に芝居のニュアンスがあるっていうかさ。
P ああ、なるほど。
W すっかり瀧さん=役者のイメージが定着しましたね。
I うちらの中では昔から、瀧には芝居の要素があるってずっと言ってたんですよ。こいつの家の表札に”劇団油田”っていう架空の劇団名を勝手に貼ったりしてね。っていうのも、当時うちらの間では芝居をやるってすごい勇気のいることだったんだよね。
P そうねえ、自己表現2割増しって感じがして。
I 瀧は「あるわけねーだろ!」って言ってたんですけど。
P この通りですわ。

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瀧は声のサンプラー最近バージョンが増えた

W 瀧さんの役者仕事が増える過程で、歌に変化を感じたことってありますか。
I ありますあります。昔はレコーディングにディレクターがいて、瀧は求められたものをやるっていうスタンスだったんですよ。で、『VITAMIN』(1993年)のときに下克上があって、自分たちがディレクションをするようになったんですけど、そうなると瀧はどこを目指したらいいのかってことになり、ちょうどそのころに芝居の話がくるようになった。
P テレビのバラエティにも出始めてね。
I ’90年代後半は、瀧が役者で忙しかったんだけど、そのころ電気で唯一やってたのは、楽器もなんにもない状態で、客の前に出るっていうことで。それも海外ライヴをやったりして、そういうのが続くうちに、なんとなく変わってきた。
P 単純に度胸がついたっていう。手ぶらでいったら恥かくだけだけど、恥かくことをなんとも思わなくなった。
I なんとかなるって自信から生まれる存在感だよね。で、そういう経験もなかなかレコーディングには反映されなかったけど、『20 』(2009年)くらいから、声の周波数を意識するようになってきて。というのも、オレと瀧の声はすごく似てて、オレのピッチを下げると瀧に似るし、瀧のピッチを上げるとオレに似るんですよ。そこに気づいてから大分変わったよね。それから「もうワンテイクやらせてくれ」とか、昔だったらありえないことを言うようになった。
P あとマイクが変わって、聴き心地がよくなったのもある。
I ちゃんとモニタリングできようになったね。瀧はいろんなスタジオのナレーション収録で慣れてきたっていうのもあるよな。ナレーションで慣れてきたって、今のダジャレじゃないですよ。
W はい(笑)。そこで楽器としての声を認識するようになったと。
I まあ瀧は音楽が得意じゃないので、ヴィオラのような声とか言ってもわかんないから。「身体が大きくて、どっしりしてて、いばってる感じ」とか言うと、求める帯域が出る。つまりサンプラーですよね。
P そう、声はブレイクビーツと同じ。芯のある声とか、倍音含んでビリビリすると声とか、もうちょい男前とか、最近バリエーションがちょっと増えてきた。今回うちの嫁が「人間大統領」でやってる司会者のセリフを聴いてゲラゲラ笑っててさ。こういうの昔はお芝居って感じでやってたけど、今はもう本当にこのポジションありえるよねって。
I バラエティ的な瀧を知ってると「人間大統領」の司会者ぶりはメタ的な感じがあるでしょ。で、テレビの中の瀧を知らないと、メタどころかパラレルワールドな感じがする。じつはうちら、ずっとそういうものを目指してはいたんです。今回それが上手い形でできた。
P 歌ってるのはひとりでも、たくさん人がいる感じね。
I じつは『VOXXX』も同じテーマで作ってて。”声”(=VOX)って名付けたのはそういうことなんだよね。声は音でありながら、意味も持つっていう。そこは未だに変わんないよね。
P そうね。

マッドチェスターの洗礼が電気グルーヴのルーツ

I あと歌詞に関しては、10代のころにドイツ語とかの曲を聴いて、まるっきり意味わかんないけど語感が響いてくることがあったんです。それで一生懸命意味を調べて、こういうこと歌ってんじゃねえかなって想像するところから生まれる誤解がすごい好きだった。
P そういうのあったねえ。こういうことかなって自分の中で勝手に構築して、そのバンドの評価が異常に高くなったりとか。妄想はときに真実より上にいくっていう。
I そういう楽しみ方を日本語でもできるんじゃないかなって思うんだよね。うちらにバラードがないのはそういうことで、ひとつの感情に持っていかれるような歌詞はいらない。楽しいのはいいけど、怒りとか悲しみは強制したくないんですよ。そこはやっぱりマッドチェスターの影響がルーツにあるよね。
P 最初にマッドチェスターの洗礼を受けたからね。
I 電気の初レコーディングがマンチェスターだったんだけど、当時ハッピー・マンデーズとかのバンドが大全盛で。彼らの価値観はそれ以前のパンクに近くて、主役はお客さんっていう考え方なんだよね。ステージでピンスポは使わないとか、スターぶらないスタイルに感銘を受けてさ。
P お客さんがハジける2時間になればいいっていうね。
W 確かにハッピー・マンデーズのショーン・ライダーは愛されキャラですからね。
I 一部の人にね。「いいね」と「よくないね」がいっぱい付くタイプ。無視されるのが1番きついからね。SMプレイでは無視されるのが1番きついんですよ。

プラモデルでいう”汚し”をどうするか

I あとね、今回は全部ほとんどガレージバンドで作ったんです。Macについてるタダのソフトね。
W おお。その理由は?
I めんどくさくて(笑)。プロでそこまで作ってる人いないし、1回やってみようかなって。もちろんプロ・ツールスでもできるけど、そうするとプラモデルでいう”汚し”の作業に手間が掛かるんです。汚すためのプラグインエフェクトをまた買うのもムダだし、後で汚すくらいならラップトップで全部録ろうって。意外と歌もそれで十分だったりするんですよ。ちゃんとしたマイクで録り直したらニュアンスが変わっちゃって、もう1回Macに向かって歌ったりとか。
P PowerBookのマイクで録ったりね。そのマイクでシンセを録ると、ちょっと遠くで鳴ってるような感じがあって。空間を感じさせるというか、音が膨らむ感じがする。
I あと、キーボードの1発録りをケーブルを繋がずにやったり。MacBookのマイクで録るとカチカチ(キーを打つ)音が入ったり、衣擦れの音が入ったり、意図的じゃないけど生活音が入ることで音が有機的になるんです。上手く濁るっていうかね。
W なるほど。
I 例えば「人間大統領」はチャウシェスクの独裁政権をイメージした曲なんですけど、歌詞は最初面白おかしいヤツが出てきて、途中からだんだん独裁大統領がやってる酷さにクローズアップしていく。で、アレンジとしてはそれほど展開がある曲じゃないんだけど、後ろにうっすら入ってるコード進行に少しずつディミニッシュを入れて、だんだんダークな響きになるようにしたんです。譜面に起こしてもわからないくらい、うっすらと。
W うわ、それ面白いですね。
I そもそもDJミュージックって、キーが合ってないものが多かったりするんですよ。今はPCだからピッタリ合わせられるけど、僕はレコードの時代からやってるんで。レコードは盤によってキーが違うから、スピードを合わせたら当然キーもズレる。DJカルチャーではその不協和音が当たり前のこととしてあるから、それをどう使うか。そう考えることですごいラクになりました。
W ほとんどサブリミナルの域で、聴き手としてもスリルあります。
I そうそう、そういうのすっごい好き。だって”音を楽しむ”と書いて”音楽”と言いますからね。あと”明るく照らす”と書いて”メーテル”と言います。”呼ぶ人”と書いて”よひと”と言います。”島の人”と書いて”しまびと”、”黒い人”と書いて”くろんちゅ”って言います。
W あ、もういいです…(笑)。

トロピカルラヴ……普通なのに不気味!

W タイトルの『TROPICAL LOVE』はどうやって付けたんですか。
I まあリゾート感というか、南国の感じを2人で共有できる精神状態だったというか。これまでツアー名が”下痢便発電所異常なし”とか”塗糞祭”だったのに、今さら『TROPICAL LOVE』ってなんだろう、普通なのに不気味!っていう。
W 確かに。こう言うと失礼かもしれませんが……。
I あっ、失礼なこと言うんですか。僕、 女の人に失礼なこと言われるの好きですよ!
P まあまあ、ちょっと聞こうや(笑)。
W あのー、「いつもそばにいるよ」っていう曲名とか、若干気持ち悪いなって(笑)。
I それはうちらだから気持ち悪いんでしょ。これをシンガーソングライターが歌ってたら違いますよね?
P そこまでは一緒に居たくないってことじゃない?
I 添い寝はしなくていいよっていう?
W じゃなくて(笑)。電気に歌われるとなんか違和感あるなあって。
I まあ、異様なんだけど心地いいとか、矛盾の感覚、アンバランスのバランスは大事ですよね。痛いけど気持ちいい、恥ずかしいけ
ど気持ちいいとか。そういう感覚を求めてる、変態性欲者なんです(笑)。

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『TROPICAL LOVE』(SONY)発売中
『人間と動物』以来、4年ぶりとなるフルアルバム。KenKen(Ba)、トミタ栞(Vo)、夏木マリ(Vo)、笹沼位吉(SLY MONGOOSE・Ba)ら、親交のあるアーティストが多数ゲスト参加している。ドラマ主題歌となった「Fallin’ Down」のアルバムミックス他、全10曲。

アルバムリリース記念ってことで聞いてみました。

間もなく結成30年を迎える電気グルーヴの2人に、今さらですけど素朴な疑問をぶつけてみました。2人ならではの答えに掛け合いは流石です(笑)。

電気グルーヴQ&A―Pierre Taki

Q1 :去年で1番思い出に残っている嬉しかったこと。
A1 :自分の草野球チームがリーグ戦で優勝したこと。

Q2 :相手の意外に好きな部分は?
A2 :面白くて、キュートなところ。

Q3 :相手の嫌いな部分は?
A3 :たまに二の腕をつねってくる。酔っ払ってヒマなときに、暇つぶしとしてつねる。

Q4:お気に入りのスニーカーは?
A4:紐がなくてスポーンと履けるタイプ。色と素材で選ぶんで、メーカーのこだわりはないです。

Q5:電気グルーヴを結成しなかったら、卓球は今ごろ何をしていると思う?
A5:アンテナはしっかりしてますから、レコード屋はやれそう。どのへんに店出したい?
(卓球) 武蔵小山。オレがやるとなるとマニアックな好き者が集まるところだよね。となると、渋谷の激戦区からちょっと離れた目黒本町あたりがいいかな。
(瀧)150人を相手に商売する感じね。
(卓球)そうそう。そんな感じでやっていくんで、近くに来たらぜひ寄って。ただし僕の店っていうのはオフレコね(笑)。

ピエール瀧 Profile
音楽活動のほか、俳優、声優、タレント業、ゲームのプロデュース、漫画の原作など、幅広いジャンルで活躍。俳優としての評価も高く、2013年にブルーリボン賞、日本アカデミー賞などで助演男優賞を受賞した。

電気グルーヴQ&A―Takkyu Ishino

Q1:去年で1番思い出に残っている嬉しかったこと。
A1:ニュー・オーダーと友達になったことと、『TROPICAL LOVE』ができたこと。

Q2:相手の意外に好きな部分は?
A2:ゲイカップルだってことを長年ばらさずにいてくれてるところ。嘘ですけどね。

Q3:相手の嫌いな部分は?
A3:屁のタイミングが悪い。食事中とかにする。最近だいぶ減ったんですけどねえ。

Q4:お気に入りのスニーカーは?
A4:「CONVERSE 」。「CONVERSE 」は汚くてOKっていう価値観がいい。あと、海外で買ってきた限定「CONVERSE」の優越感がたまらない。そこから生まれる人を見下したスタンスと、そのとき生まれる醜い気持ち。それを持ってしまった自分への反省。家に帰ってからの孤独感。そのすべててが「CONVERSE」にはあります(笑)。

Q5:移動中必ず持ち歩くものは?
A5:「Klipsch」のイヤホン。DJするのにいろんなところに行くん
で、これがないと移動が地獄。

Q6:電気グルーヴを結成しなかったら、瀧は今ごろ何をしていると思う?
A6:東京で浮ついた仕事やってると思いますよ。クリエイティビティの必要とされるところで、かつデカい顔ができて、団体の長になれるような職。たぶん映像関係かな。下積み時代には「なに、5日寝てない? オレの若いころは5年寝てねーわ!」とか理不尽なこと言われてさ。瀧は今もADやりたいって言ってますよ、1番下積みから(笑)。

石野卓球 Profile
日本のテクノシーンを黎明期から牽引し続けるDJ/アーティスト。1995年に初ソロ作をリリースし、1999年から2013年まで日本最大の大型屋内レイヴ”WIRE”を主宰。欧州を中心とした海外活動も積極的に行う。

※本ページは『warp MAGAZINE JAPAN』2017年4号に掲載された情報を再編集したものです。

http://www.warpweb.jp/feature/feature.html