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窪塚洋介 降谷建志

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06/27 22:21 UP DATE COLUMN

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自然だけど不正解な2人、20年を経て実現した初遭遇

窪塚洋介と降谷建志。約20年に渡り、日本の映像&音楽シーンを牽引してきた2人が、W主演映画『アリーキャット』で初共演を果たし、卍LINE&Kjとしても「Soul ship」で初コラボを実現。異なるフィールドを別々のルートからアプローチしながら出会った両者による視聴覚表現の形と、まるで旧友のような関係性を築いたその真意に迫る。


「一緒の画角に入ると「なにこの自然だけど不正解な2人は!?」って。凸と凸が揃っちゃった、みたいな」(降谷建志)
「20年間も会えなかったことにも意味があるだろうけど、いま出会えたのはやっぱり導きだよね」(窪塚洋介)

warp(以下、W) 今まで共演や共作がなかった2人ですが、出会いのきっかけを教えてください。

窪塚洋介(以下、K) 約2年前に、共通の知人の結婚式で会ったのが最初ですね。お互い昔から知っているような感覚はあったけれど、その時に「初対面だよね? はじめまして」と挨拶して。その2週間後に『アリーキャット』のオファーが来たという。

降谷建志(以下、F) 側から見れば、古くからの知り合いで、すごく仲良い2人なんだろうな、というイメージを持たれていても不思議ではないかも。自分たちでも、本当に初対面だっけ? という感じではあったから。やっぱり同じ時代を生きて・活動してきたという共通項があったからなんでしょうかね。

K 活動内容も近いし、共通の友人や仲間もたくさんいるから。そういう意味では、勝手に仲間だと思っていたかもしれない。

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W お互いどういった印象を持っていましたか?

K やっぱりロックスターとしてずっと見ていたかな。

F 俺は役者の友達や知り合いが結構いるんだけど、その人たちと話すときは、良い意味で”役者さんだな”って感じることがあって。でも、マル(※窪塚の役名。降谷は今も親しみを込めてこの名で呼んでいる)と最初に話したときは、その感じがまったくなかった。だからこの人、役者の中ではおそらく異端というか、バンドマンやミュージシャンの温度に限りなく近いなと。実際会ったときも、違和感ゼロだったから。

K 普段から役者の人とあまり付き合いがなくて、異業種の仲間のほうが多い。だから、建志くんと役者の人が一緒に呑んでいる場に合流すると、変な感じがする(笑)。

W 『アリーキャット』の主人公であるマル/朝秀晃とリリィ/梅津郁巳は、窪塚さんと降谷さんをイメージしてキャラクターが作られたそうですが、お互い出演することは知らされた上でオファーがあったのですか?

F 俺には「窪塚さんが主演です」という説明があって、それですぐに本人に連絡をした。トレンディ・ドラマだったら、完全に運命的に出会うシーンだよね(笑)。それで1度会おうということで、ちょうどライブで大阪に行ったタイミングで直接話して「是非やったほうがいいよ」と言ってくれて。

K やったほうがいいというより、俺はもう「一緒にやろう!」ということを伝えた。

F どんなプロジェクトをやるにしても、作品の規模とか内容の面白さよりも、関わる人で選んでいるんですよ。もちろんマルが出演するのも大きかったけれど、榊監督とお会いしたときに目をそらさず誠実に話してくださったから、この船に乗ってみようと。

W 元ボクサーで警備員のマルと、自動車整備工場で働くリリィが、保護猫をきっかけに出会ってバディを組む。2人ともどこか煮えきらず社会から疎外されながら生きているわけですが、それぞれの人間像についてどのような解釈してましたか?

K マルとリリィは、どこかチグハグだけど、もがきながら自分自身を生きるという芯の部分は共通していると思う。実際の人間性でいえば、もしかしたら俺がリリィっぽくて、建志くんがマルに近かったような気もするけど。

F でも、2人とも本質的にはリリィだよね(笑)。

K そう言われると、そうかもしれない(笑)。

F リリィを演じるにあたって、裏テーマで設定していたのは、”猫に九生有り”(※猫には9個の魂があり、9回生まれ変わるということわざ)ということ。生まれ変わっているけど、元の魂は同じだったということを監督と話しましたね。なので、あくまで猫っぽく、くっ付いたり離れたりするけれど、時には空気を読んだりして、自分が赴くままに動きたいと思った瞬間だけ動くというか。

K わがままだよね。

F そうそう。でも、利己的な正義感はある。利己的がゆえにピュアというか。良くないと思ったことであれば、絶対に手を出しちゃいけないシチュエーションでも猫パンチしちゃうみたいな。ただ、どうでもいいことであれば乗っからない。一般的に正しいか誤りかではなく、自分の倫理観で動く奴だね。

K そういうピュアな部分はマルにも共通しているけど、性格やライフスタイルはリリィよりもくすぶっていると思う。だから、演じる上では自分が10代の頃に経験したことや信念みたいなものを、もう1回思い起こすような感覚もあった。追体験で演じて立ち上がって再生する、みたいな。その感覚がこの作品のメッセージでもある”生まれ変わる”にも繋がったらいいなと。

W 劇中ではマルのバックボーンは描かれていますが、リリィに関してはほとんど語られていませんよね。

F そのあたりは、マルがいなくなった瞬間に浮き彫りになっていると思いますが、リリィは日頃からグレーゾーンで生きていて、基本的には退屈してるんですよ。猫じゃらしみたいなものが日常になくてシラケてる。そういう中でマルという存在を見つけたものだから、それが良い悪いではなく面白そうだから首を突っ込んでみたと。

K マルはそんなリリィという鍵を見つけたことで、次のステージに行くためのきっかけを掴んで再生していくという。

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W 約2週間の撮影を通じてお互いの関係性を構築していったと思いますが、現場でのお互いの印象はいかがでしたか?

K 建志くんにとっては別のフィールドなので、最初は「胸を借ります」なんて言っていたけど、実際は現場を引っ張ってくれて、本業の俺たちがほだされて温度を上げてもらった感じ。やっぱり天性の肌感覚やピュアさがあるから、それを嫌が応にも感じて、あらためてすごいなと思った。

F 異業種とはいえ、きちんと仕事として受けている以上、素人だからという考え方は通じないから。でも、大勢でものを作ることがいかに美しいかというのは、バンドで音を鳴らしてきて理解していたので、映画も同じというかその美しさを感じることができたよね。

K そもそもお父さんも奥さんも芝居者だから、その環境で良い土壌を耕されて、それが活きていたとも思うけど。

F どんなことでも同じだけど、得意なことを続ければさらに得意になっていくわけで。俺でいえば、バンドをやっている姿が1番格好いいに決まってるし、それは20年間に渡って死ぬほど努力してきたから当たり前なんだけど、役者業に関してはそういうわけにもいかない。だから、醜態さらす覚悟で行った。とにかく勉強という気持ちで、監督やいろいろな人に質問しまくった。

K そのあたりはすごくフラットだったし、スポンジのように吸収してたね。

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W 窪塚さんは役者として21年目、Dragon Ashもメジャーデビューから20年を迎えましたが、20年間という年数に対してどのような想いがありますか?

F それを意識しながら日々を生きているわけではないので、例えば、最新アルバム『MAJESTIC』に関しても、20年の想いを詰め込んでいます、という感覚で作ったわけではなくて。ただ、事実としての継続年月というのは、偶然手に入れられるものではない。365日×20年という期間を続けないと成し遂げられないので、相当な誇りとしては持っていますよね。

K 俺も建志くんが言ったように意識していないし、20年前に今の自分の姿を想像していたわけじゃないから。とにかく、今を生きているという事実のほうが大切というか。今が最高だから、明日はもっと最高にしたい、という感じ。

F お互いに、自分の闘い方、という部分でやってきたとは思うよね。

K うん。それと、直感を信じること。レゲエのシーンではガイダンス(導き)と言ったりするけど、今回の映画でも建志くんと出会って2週間後にオファーがあったわけだし。そういう導きやそれを捉える感覚を使って、歩む道を決めていくというか。

W 窪塚さんは、卍LINEとして音楽活動を始めて11年目。最新アルバム『真説~卍忍法帖~福流縁 壱ノ巻~天~』にも収録されている「Soul ship」では、卍LINE&Kjの共同楽曲が実現しました。約20年に渡って最前線かつド真ん中で活動してきた2人だからこそ歌える内容かなと思ったのですが。

F 2人だから歌えた曲であることに違いはないけど、お互い矢面に立たされてきたとか、それぞれの立場がどうこうなんてことは気にはしてない。マルなんて本当に自然体だから。それゆえに誠実だし火傷もするけど。

K 最近は火傷しなくなってきたけどね(笑)。

F 触ったら熱い! ってことを知ったからでしょ(笑)。

K これ熱いの? 本当だ熱いっ! みたいな(笑)。

F でも、マルにとって「Soul ship」は、自分自身に対して歌っている部分もあるような気がしたけど。

K それは間違いない。

F もちろん、周囲の人たちに対して発信している部分もあると思うけれど、まずは自分が後悔しないような生き方する、という想いを感じた。それは、役者とかアーティストとかという立場のことではなく、男の子として生まれた以上はそういう想いがあるから。しかも、役者とかアーティストよりも実社会のほうが大変なことも多いわけで。だからこの曲は、実社会の人たちも俺たちも含めて「本当に妥協してないか?」「それでいいのか?」という自分自身に対して問う歌。自分だけは絶対に騙せないから、まずは自分に問いかけるというか。

K そうだね。みんながもっと自分の心の声を聞いて、それに対して忠実に生きられるようになったら、世の中もっと早く良くなると思うんだよ。人によって価値観が違うからすごく相対的になるかもしれないけれど、例えば、東日本大震災で地球人として痛みを共有したけれど、そこで体験したことや感じたことを歌を通じて共有できた。俺にとっては、みんなと想いを共有して最高のバランスを取ることが大きなテーマだから、常にノーボーダーというスタンスでいたい。だから今回、建志くんが一緒に楽曲をやろうと言ってくれたときも即答だった。

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W あらためて、なぜ一緒に楽曲をやろうという運びになったのですか?

F 今までバンドのメンバーでも2週間連続でいることはなかったけど、今回の映画では常にマルと一緒にいて、しかも撮影で疲れきって1番メッキが剥がれてる姿も曝け出した。そういった状況やフィールドの中で多くのことを教わったので、その恩返しの気持ちから「卍LINEが楽曲を出すタイミングがあれば、一緒に作らせてほしい」と。

K ちょうど俺もアルバムを作っていたから。でも、スタジオにいる建志くんは撮影のときの降谷建志ではなく、まさにバンドマンのKj。あれは本当に喰らった。思わずコッソリ写メを撮っちゃたから(笑)。

F 俺がブースに入ったときに「Kjだ!」って言ってよね(笑)。

K やっぱり自分のフィールド、自分のスタジオにいるときはオーラが違う。今でもマルと呼んでくれているけど、俺は完全にリリィからKjに引き戻された。そのKjがブースでの立ち位置から音の奥行きに至るまで、音楽のイロハを教えてくれるから、完全に先生と教え子みたいな関係性になったよね。

F こっちがデートコースを決めて、すべてエスコートするみたいな。まぁ、今後の音楽活動に役立て欲しくて、こっちが持っていたもの全部入りにしたけど。

K 本当に勉強になった。個人的に聞きたかったことがあるんだけど、音楽制作する上で、Dragon Ashとソロでは、やっぱり想いとか手法は違うものなの?

F 違う。ただ、同じ人間からメロディもオケも歌詞も生まれているから、共通点のほうが多い。その中で、ソロは凄い些細なことでも表現していいというルール。例えば「この灰皿、人喰う花みたいだ」みたいなことでも曲にしていいというか。

K バンドのスポークスマンではないから?

F そう。Dragon Ashはバンドシーンとかバンドカルチャーの中にいる事実や所作みたいなものが反映されるけど、ソロはブログ感覚で曲を作るというか。

W 窪塚さんは俳優業と音楽業はリンクしていますか? 以前から、卍LINEも窪塚洋介も違う植物だけど、根っこでは繋がってると言っていますが。

K 双方で得たものが、それぞれにフィードバックされる関係性かな。すべてをプラスにしたいという強欲なところがあるから、相乗効果を生むように共鳴させて無限の可能性を開いておく。嫌なことも自分の気持ちひとつで楽しみに変換できることも気づいちゃってるから、ネガティブな事柄からもエネルギーをもらって力にしちゃう。

F マルはね、心意気があるんだよ。過去の行いすべてが正しかったから、今の窪塚洋介や卍LINEがあるわけじゃないと思う。間違いだらけで無駄な日々を膨大に過ごしてきて、そういうことがあって今があるんだよ! って、ちゃんと今の自分を肯定できる。失敗なんて人の100倍以上してるはずだから、過去の消したいページを今で帳消しにしていく心意気だよね。

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W 降谷さん自身は、バンド、ソロ、俳優と活動幅がありますが、それらはどういう関係性で成り立っているのですか?

F 正直、それを語れるほど真髄に達していないからわからないけど、物事に心の底から惚れ込んで人生を掛けて追求していくことは、職人さんや武道家と同じだと思う。俺自身に関して言えば、1回限りの人生でいろいろなことをやろうとしても、全部が中途半端になってしまうと思っていたから、ひとつのことでなるべく頂上に近いところに行ってやるという価値観だった。でも今は、俺はこういうサイズ感、イメージだという固定概念固を外してもいいかなと。苦手なことでも誘ってもらえたら腰を上げてやっていこうとか、魅力的だと思う人とは一緒にやっていこうと決めてますよね。

W 『八重の桜』に出演した後、「求められるのであれば、またやりたい」と言っていたのが実は意外で。Kjは敷居が高くて他のことには目を向けない、というパブリックなイメージがあったので。あの辺りから少し変化が生まれたという感じですか?

F うん。ひとりの人間としては、基本的に敷居は尋常じゃないくらい低いから(笑)。表現者としても、自分自身が面白くなるように進めていきたいし、とにかく後悔しない人生にしていきたくて。

W 2017年は2人の映画共演もあり、それぞれ最新アルバムもリリースしました。そういう新たな始まりが生まれた年ですが、また何か機会があれば共演・共作の可能性もあると考えていいのでしょうか。

K もちろん。今回は、同じ山を違うルートで登っていて、途中で一瞬合流するみたいな感じだったと思う。20年間も会えなかったこともそれはそれで意味があることだろうし、それが出会えたのはやっぱり導きだよね。楽曲に関してもアルバムの最後にレコーディングしたんですが、それこそ次のステージの始まりを後押ししてくれているんじゃないかな、と。

F 今まで会えなかったけど、映画でも写真でも、2人が同じ画角に入っていると良い空気が出るんですよ。なんていうか、2人が一緒にいる画を見ると「なにこの自然だけど不正解な2人は!?」って。凸と凹じゃなくて、凸と凸が揃っちゃった、みたいな。それが面白くて。今後も機会があるときは、今回とはまた違った特別なものにしたいよね。

K そうだね。さっそく次へのハードル上げっちゃったけど(笑)。

窪塚洋介 Yosuke KUBOZUKA_profile
1979年生まれ、横須賀市出身。2001年に映画『GO』で日本アカデミー賞において史上最年少で最優秀主演男優賞を受賞。主な出演作に、『ピンポン』『凶気の桜』『東京島』『ヘルタースケルター』『愛の渦』『TOKTO TRIBE』など。今年で俳優デビューから21年目。マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』へ出演し話題となる。活動11年目となる卍LINE としては、6th ALBUM『真説~卍忍法帖~福流縁』を4週連続でリリース。
降谷建志 Kenji FURUYA_profile
1979年生まれ、東京都出身。Dragon AshのVo,Gとして、1997年にミニアルバム『The day dragged on』でメジャーデビュー。降谷建志名義では、2013年にNHK 大河ドラマ『八重の桜』に出演、2015年に初ソロアルバム『Everything Becomes The Music』を発売。Dragon Ashが20周年を迎えた今年、11thアルバム『MAJESTIC』をリリース。現在、10月まで全国ツアー「Dragonash Live Tour 2017 MAJESTIC」を決行中。
『アリーキャット』
監督:榊英雄
出演:窪塚洋介、降谷建志、市川由衣、品川祐、火野正平他
7月15日(土)より、テアトル新宿他、全国ロードショー

※本ページは『warp MAGAZINE JAPAN』2017年8+9号に掲載された情報を再編集したものです。

http://www.warpweb.jp/feature/feature.html