COVER STORY 高良健吾

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06/14 11:29 UP DATE COLUMN

COVER STORY 高良健吾

 豊かな経験値で跳躍する役者としてのさらなる高み

『warp』が注目の俳優にフォーカスする企画「cover story」。今月は近年、意欲的に話題作へと出演し、役の幅を広げつつ存在感を高めている高良健吾が登場。まもなく30代へと突入し、その先の役者人生を見据える前向きな姿勢には、確固たる信念が宿っていた。
photo: Yuichi Akagi styling: Masataka Hattori hair&make: Kouhei Morita text: Jun Nakazawa


「自分から漏れそうになる感情を、正しいところに入れたり、はみ出さないようにコントロールできるようになったらいいなと思います」

warp(以下、W) 表紙で登場していただくのは久々になりますね。

高良健吾(以下、K) warp自体に出るのが3年ぶりくらいですよね。実は、雑誌とかでポーズをとっての撮影があまり得意なほうではないなと思っていたけど……ひさしぶりにやってみたらと楽しかったです。

W そう言ってもらえて良かったです(笑)。今月号がアウトドア特集なのですが、それ自体には興味はありますか?

K アウトドア好きですよ。前はインドアだったんですけど、今は結構アクティブに動いています。BBQだけでもしますし、どこかに行ってテントを張って泊まったりもしますね。

W インドア派からアウトドア派に変わるきっかけがあったんですか?

K 僕は熊本県出身なので、地元にいたときは普通に自然が身近にありました。東京に出てきてからは自然に触れる機会や場所がなかったりで離れていただけで。もともとは大好きです。少し前にもアメリカに行っていたんですけど、4年くらい前にグランド・キャニオンを訪れて谷底でキャンプをしたことを思い出しましたね。

W グランド・キャニオンの谷底で! それはスケールが大きいですね。

K かなりしんどかったですね。やっぱりグランド・キャニオンは想像以上のスケールですし。1週間前も行って、谷には下らなかったけど、覚えていたポイントまでは歩いて行きました。

W いつも持っていく愛用グッズなんかもあったり?

K なんだろう……前はスピーカーを持って行っていたんですけど、今は持って行かなくなりました。静かな中で、自然の音を楽しむようになりましたね。あとは昔から使っているハットがあって、それはもう長いですね。ボロボロになっているけど、なぜか使い続けているんです。

W 自分の中でアウトドアに出掛けたくなるタイミングは、どんなときですか?

K しょっちゅうあります。休みが入ったら必ず行きますし。旅に行っても、その近くの山を歩いたり、BBQやテントを張るまではいかなくても、そういうことはよくします。1年前はキューバにひとりで行って。それは1人で行って、バスで横断しながら、現地の山や海、森の中をあてもなくブラブラしたりしました。

W 忙しい日常をリセットする、みたいな感覚?

K 自分自身でも東京のことを以前より好きになったと思います。そう思うけれど、でも定期的に自然があるところにも行きたくなるんです。

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写真左 NEEDLESのハンティングベスト 1万8000円(NEPENTHES)、GREG LAURENのプルオーバージャケット 16万円、PROPER GANGのパンツ 3万3000円(ともにEDITION OMOTESANDO HILLS)、その他本人私物
写真右 PROPER GANGのジャケット 5 万2000円(EDITION OMOTESANDO HILLS)、USEDのジャンプスーツ 2万9800円(VELVET)、PIGALLEのスカーフ 9000円(PIGALLE TOKYO)、YOHJI YAMAMOTOのブーツ 11万7000円(YOHJI YAMAMOTO PRESS ROOM)

W 行く前と帰ってきてからでは自分の中で変化もありますか?

K 確実にありますね。なんというか……東京にいるときは自分が外に対してどこか勘ぐっている気がしていて。勘ぐることは、すごくダサいと思っているけど、勘ぐっている。海外に行っているときや、アウトドアをしているときは、それがなくなる。それ自体が自分にとってすごくいいことなので。勘ぐりがないのが最高なんじゃないですかね。

W でも、いろいろなことを円滑に進めていくためには勘ぐりって実は必要なことだったりしますよね。

K そう。だからそこを否定する気はない。でも単純に好きか苦手か、といったら苦手なほうかなと。確かに何かをスムーズに進めるためには必要な感覚だと思う。それで気付けたり、どこか疑ったりして、俺はこっちだとか、新しい考えになるから。でも本音では嫌ですよね。

W 出身地が熊本県ということでしたが、2016年に震災がありましたよね。そこで改め自然の豊かさ、素晴らしさに気付くこともあったり?

K 僕は昔から気付いています。今でも年に1~2回は帰るし、阿蘇は祖父母が住んでいるところなので、大好きな場所ですね。阿蘇山の火口の下の、白水村というところで。阿蘇に行ったら祖父とBBQをよくやっていたので。小さいころからアウトドアは身近なことだったなと思います。

W 今度公開される映画『彼女の人生は間違いじゃない』は福島県が舞台となっていて、震災の5年後を描いている作品ですよね。廣木隆一監督の作品に出演するのは、2011年の作品『軽蔑』以来ですが、オファーを受けたときの印象は?

K すごく嬉しかったです。自分が18歳のときに『M』という映画で出会って、いろいろなことを叩き込んでくれた監督なので。当時はまだ熊本の高校生で。そのときに言われたことを未だに守っていたり、できなかったり、まだ繰り返しています。毎回、廣木さんの作品に出るときは試されている気がしています。どこか自分の中で欲が出たりする現場なので面白いですね。

W 当時言われて、ずっと守っている言葉とは?

K 「ちゃんと目の前にいる人に伝えなさい」とか、「ちゃんとそのシーンにいなさい」とか。今思うと、とても難しいことを、すごくシンプルに短く言ってくれていて。それをひたすら守っていくためには、そこに行く前の準備だったり、経験値というのが必要だったんだなと思う。当時はできるわけないので。それをずっとやりたくて、ずっとやろうとしてきた中で気付いたのが、相当に難しいことを言ってくれていたんだなと改めて感じます。当時の自分を思い出して面白いなと思うのが、10年間はテクニックをやらないぞと決めていた事。それは廣木さんに「テクニックでやるな」と言われたのを、鵜呑みにしていただけなんですけどね(笑)。もうすぐ30歳になるんですけど、当時から10年以上経って、27歳くらいのときから、いろいろなことをやったり、試さなければと試行錯誤し始め、当時言われたことの大切さや意味がやっとわかってきた感じです。

W 廣木監督はどんなコミュニーケションの取り方をされる方でしたか?

K 「とりあえず見せろ」という感じです。今でも覚えているのが、自分が18歳のときに廣木さんに演技について質問しに行ったら、自分で考えろと突き放されて。それは「おまえから出てくるものはなんだ」ということだと思います。すごく信じてくれているというか、僕以外の役者のことも、その人から出てくるものを信じたいんだろうし、それを拾ってくれる方ですね。自分から出てきたもの以上のところに連れていってくれるし、絶対に自分から出ないところへ連れていってくれたり。しかもそれが俺と廣木さんだけではなくて、現場全体でやるから。その中で与えられたものをちゃんとやるのがプロだなと。自分自身がちゃんとしないと、ただ嫌な人間とか、つまらない人間が写っているだけになるから怖いなと思う。そのときの自分が出ちゃうから。

W 他の現場では体験できないものがあると。

K あると思いますね。

W 撮影に行く前はちょっと憂鬱にもなったり?

K 前日は憂鬱ですね。当日は大丈夫になってきましたけど、前日の夜は正直きつい。気持ちを作り過ぎていくと怒られるから。イメージを作っていったり、現場でこういうことをやるぞと考えているとバレるんです。現場で感じたことを大切にしろ、という監督なので。でもまったく準備をしていかないでいいかというと、それも怒られる。そのバランスが昔はわからなかったけど、今は準備のひとつとして、台詞を覚えることだと思います。

W 今作は廣木監督の処女小説が原作ということで、気持ちの入れ方も違うのかなと。現場にいて、それは感じましたか?

K やっぱり廣木さんが福島出身で、原発というものに対して、怒りのようなものがあるんですよ。それってやっぱりこの小説を書く前から会っていたときに、「今度小説を書くんだよ」と聞いてもいたので。出版される前に読ませてもいただいて。廣木さんも還暦を迎えて、年齢を重ねられて行く中でなんかいろいろと秘めた想いがあるんだと思うんです。自分の故郷に対してだったり、故郷を取り巻く今の状況に対してだったり。そこに対しての怒りだったり。『彼女の人生は間違いじゃない』というタイトルは、すごくどストレートな題名だなと思っています。デリヘルの女の子が主人公の話で、いろんな見方があると思う。でも廣木さんは世間から色眼鏡で見られてしまうような人たちの感情を、すごく優しい目で見ているなと思うんです。どこか使命感もあったんじゃないかなと思います。

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写真左 NICHOLAS DALEYのメッシュタンクトップ 3万7800円(吾亦紅)、midorikawa for 1LDKのシャツ 3万5000円(1LDK)、YOHJI YAMAMOTOのパンツ 8万2000円(YOHJI YAMAMOTO PRESS ROOM)、YMCのダブルバックルベルト 1万2000円(jackpot)
写真右 YOHJI YAMAMOTOのシャツ 5万3000円(YOHJI YAMAMOTO PRESS ROOM)、NICHOLAS DALEYのメッシュタンクトップ 3万5800円(吾亦紅)、PROPER GANGのキルトスカート 1万9000円、GREG LAURENのハット 17万3000円(ともにEDITION OMOTESANDO HILLS)、RED WINGのロガーブーツ 4万6200円(レッド・ウィング・ジャパン)、その他本人私物

W 今作を終えて、今後役者として目指したい方向性はありますか?

K 実は、特別に「これがやってみたい」と言った役というのはもともとそんなになくて。どんな役がきても新鮮な気持ちでやれています。でも、僕は10あったら12~14くらい喋っちゃう、口に出してしまうタイプなんです。だから短く、的確に伝わるような言葉が話せて、それに近いお芝居ができたらいいなとは常々思っています。

W 簡潔だけど、その奥には深みのある何かを伝えられるような表現というか。

K それは自分がずっと1番やりたいことで。それこそ廣木さんが、最初に言っていたことだと思うんです。「わかりやすいことばかりするな」とよく言われていたので。本音は隠していても嘘は言わない、みたいな。自分の感情がダダ漏れしているのは、ちょっと恥ずかしい。写真を撮られているときでも、芝居をしているときでも、インタビューしているときでも。表現にしても、芝居にしても、その人自身がすべて出過ぎるのはどうかなと。それがいい時期もあるんですけど、それは若さや勢いの特権だったりするので。今はもっと自分から漏れそうになる感情を、正しいところに入れたり、はみ出さないようにコントロールできるようになったらいいなと思いますね。それは今作を終えて、より感じるようになりました。

W 20代最後のタイミングで廣木監督と仕事ができたのも、何か運命だったのかもしれませんね。

K できて本当によかったし、30歳になって何をやろう、という気持ちも強くなりました。どうせならガッツリ現場にいたいですからね。20代最後に自分のまだまだ弱いところが写ったと思うから。それをある意味見られた、演出されたというのは、やっぱり貴重なことなんだと思います。

W 30代の高良健吾という役者がどんな存在になっていくのか、すごく楽しみにしています。

K ありがとうございます。すごく無意識だったことを意識してできるようになることは、楽しいし。それは一朝一夕というか、すぐにはできないことなので。それを自分の実感として体感していきたいですね。

高良健吾 Kengo KORA_profile
1987年生まれ、熊本県出身。2005年より俳優活動をスタートし、主演を務めた映画『軽蔑』、『横道世之介』などで数々の賞を受賞。大河ドラマ『花燃ゆ』、朝の連続テレビ小説『おひさま』、『べっぴんさん』、フジテレビ系ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など話題作に多数出演し、その演技力を高く評価されている。2017年10月7日(土)から『月と雷』テアトル新宿ほか全国公開が控える。
『彼女の人生は間違いじゃない』
監督:廣木隆一
出演:瀧内公美、光石研、高良健吾、柄本時生
7月15日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

NEPENTHES ☎03・3400・7227
EDITION OMOTESANDO HILLS ☎03・3403・8086
PIGALLE TOKYO ☎03・6452・5852
YOHJI YAMAMOTO PRESS ROOM ☎03・5463・1500
吾亦紅 ☎03・6452・5530
1LDK ☎03・3780・1645
jackpot ☎03・3352・6912
レッド・ウィング・ジャパン ☎03・5791・3280

※本ページは『warp MAGAZINE JAPAN』2017年7号に掲載された情報を再編集したものです。

http://www.warpweb.jp/feature/feature.html